メタバース時代、モーションキャプチャー技術に賭ける新興企業

ニュージーランドのオークランドを本拠とする株式非公開企業ストレッチセンス(StretchSense)は、モーションキャプチャー・グローブを製造するテック系スタートアップだ。

ベン・オブライエン(Ben O’Brien)最高経営責任者(CEO)と共同創業者は、電子技術によって手の動きをキャプチャーする良い方法を初めて思いついたときに、自分たちでじかに体験して、それが売り物になるかどうかを確かめることにした。

長い時間はかかったが、オブライエンは、ストレッチセンスが成し遂げてきたことに満足している。

そこにたどりつくまでの道のりは、スムーズとはほど遠かった。当時、ニュージーランドのオークランド大学で電子機械工学の学位をとるために勉強していたオブライエンは、まずは基本的な技術から始めた。

「友人がバイオミメティクス(生物模倣)のラボで働く夏のインターンシップの広告を見かけて、人工筋肉に関するプロジェクトに関わったんです。そこで、共同創業者(トッド・ギスビー[Todd Gisby]とイアン・アンダーソン[Iain Anderson])に出会いました。5年ほど、それぞれ別のことをして、実際に動くモノをつくるための知識を身につけました」

「1万ドルのデスクトップ電源50万ドル分とか、いろいろな人工筋肉のデモ用装置といったものを、開発したり売ったりしていました。問題を解決し、製品をサポートするやり方を覚えました。ビジネスのやり方を教えてくれる学校を修了したような感じですね。2012年に、ストレッチセンスを立ち上げました」

「会社は、社員240人まで成長しました」とオブライエンは言う。「ところが、スマートフォンアプリに移行した顧客企業に、最大規模の契約をキャンセルされて、13人に逆戻りしました。それで、何をすべきかを見直さざるをえなくなったんです」

「そのころには、AR(拡張現実)とVR(仮想現実)が成長していて、ヘッドセットの設計やストリーミングがそれを後押ししていました。そして、そのころまでに、当社も独自の装具を設計する方法を思いつき、製造するための技術を開発していました。そんなわけで、そのときに、モーションキャプチャー・グローブにしようと決めたのです」

新しいビジネスを携えた再出発にあたり、ストレッチセンスはエキスパートと手を組んだ。

「いくつかの優れたゲーム会社と提携し、彼らの『夢のようなテクノロジー的アイデア』を採り入れました」とオブライエンは話す。「2019年末に、最初のグローブを発売しました。製品は好評で、それをきっかけにして、この2年間、さまざまな顧客企業を相手に同様の展開を繰り返しています」

過去5年のあいだに、ストレッチセンスは技術の開発を続け、顧客数は28カ国の200スタジオ以上にまで膨らんだ。ストレッチセンスは、グローブ(手袋)に方針を転換して以来、開発を進めるための資金として900万ニュージーランドドル(約7億2800万円)以上を調達してきた。

その成果が、「モーキャップ・プロ(MoCap Pro)」という同社のグローブだ。このグローブには、指関節の曲がりと指の広がりを個別にキャプチャーするマルチセグメントの広がりセンサーが使われている。はめ心地のよい伸縮性のある生地でできており、洗濯機で洗える。バッテリー継続時間は8時間だ。

ストレッチセンスは、専用の統合ソフトウェアスイート「ハンド・エンジン(Hand Engine)」も開発した。これは、グローブと、人気のあるいくつかのアニメーションソフトウェア・パッケージを簡単につなぐインターフェースを提供するものだ。

「ゲーム会社やゲームスタジオは、いままさに未来を築いている最中です」とオブライエンは言う。「平均的な消費者は、そうした会社が、遠くないうちにすべてを変えることに気づいていません。VFX(視覚効果)会社は、メタバースや、そこにあふれるであろうコンテンツの開発で先陣を切っています。いずれは、VRでのトレーニングや会議のようなものにまで広がり、メタバースに関連した一般消費者向けのアイテムも開発されるようになるはずです」

「その次に来るのは、デジタル仮想空間で種々のアイテムを操作したり、コントロールしたり、影響を与えたりするための方法でしょう。別の国にいるパートナーがヘッドセットをつけ、あなたがしていることをリアルタイムで見て、手を使ってなんらかの変化を起こせるようになるのです。必要に応じて入りこめる仮想世界を構築できるわけです。再現度の高い『手』は、その世界に必要不可欠な要素になるはずです」

その実現に向けて、ストレッチセンスは引き続き、製品の継続的な改良に力を注いでいる。「当社のコア技術は、顧客ニーズと噛み合うと確信しています。そのニーズは、より多くのセンサーかもしれないし、より高速のデータ処理かもしれません」

「当社のグローブが、完璧なデジタル表現を生み出し、現実世界との違いをユーザーにまったく気づかせないまま、あらゆる動きをキャプチャーできるようになるまでは、当社の仕事が終わることはありません」

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分类:情報

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