ChatGPTに関する5つの「盛られている」話

OpenAI(オープンエーアイ)が昨年末に公開したオープンソースのAI駆動型会話型チャットボットChatGPT(チャットジーピーティー)について、いろいろなことが書かれている。間違いなく強力なツールであり、その基礎となる技術は、今後、私たちの仕事とプライベートの両方に大きな影響を与えることになるだろう。しかし、メディアは物事、特に技術的なものを過剰に宣伝するのが大好きなので、この新しいプラットフォームについて、何が本当で何が「盛られた話」なのかを知ることは重要なことだ。ということで、ここではそうした盛られた主張に焦点を当てることにしたい。
主張1:ChatGPTは新しい
ChatGPTは新しいものではない。会話型チャットボットの1つだ。このようなアプリケーションは、ここ数年、数え切れないほど出されている。

カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)を知っている人なら、誰でも知っていることだ。オンラインチャットでサイトにアクセスしたり、薬局からの処方箋の更新を促すメールに返信したり、自動電話システムの質問に答えたり、テキストで歯科医の予約を確認したりするだけでそれがわかる。CRMアプリケーションには、以前からこのような機能が備わっていた。世界のチャットボット市場規模は、2021年には37億8000万ドル(約5000億円)だったが、その当時は2027年には30%成長すると予測されていた。

しかし、私はその予測が大きく変わるだろうと思っている。その理由は、ChatGPTがはるかに優れていて、会話型AIをまったく新しいレベルに引き上げたからだ。実に会話的なのだ。番号や文字で応答する代わりに、実際の人間のようにアプリケーションとやり取りをすることができ、その後、ボットがタスクの遂行を支援する。その体験は、技術が成熟するにつれて、より良いものになっていくだろう。
主張2:ChatGPTはGoogleに取って代わる
先日、Gmailの開発者であるポール・ブックハイトが、ChatGPTのようなAIボットが「2年以内に検索エンジンを駆逐するだろう」と予言した。もしGoogle(グーグル)の株主ならかなり怖い内容だ。しかし、検索エンジンの巨人の関係者もまだ慌てる必要はない。ChatGPTとGoogleの違いは、Googleが検索に対する答えを含むウェブサイトをリストアップするのに対して、ChatGPTは独自の調査に基づいて直接答えを与え、さらにその答えを洗練するためにユーザーと「チャット」することができることだ。しかし、そのChatGPTの答えには欠陥があったり、不完全であったり、不正確である可能性もあるため、まだGoogleを殺すわけにはいかない。1つ確かなことは、ChatGPTはオンライン広告市場をひっくり返す可能性を持っているということだ。

しかし、Googleが命乞いをしないことは周知の事実だ。Googleは、ChatGPTに対抗する独自の会話型チャットボットを開発中であることを発表した。ChatGPTがGoogleの検索モデルに甚大な破壊をもたらすというのは、私も同意見だ。しかし、私はまだGoogleがこれに対処することに期待している。もしGoogleの賢い人たちがこの事態を予測しておらず、戦闘計画も立てないとすれば、Kodak(コダック)のようになっても仕方がない。
主張3:ChatGPTはいろいろなことができる
現段階では、ChatGPTはそれほど多くのことをやっているわけではない。エッセイや研究レポート、コンピュータのコードやレシピなどのために、情報を与え、その作成を手助けするだけだ。それはそれですごいことだし、今後のコラムでもたくさん挙げていこうと思う。しかし、チャットボットはどんなに進化しても、人間と同じように対話することはできないし、おそらく今後もできないだろう。チャットボットは、慰めることも、共感することも、やる気を起こさせることも、イノベーションを起こすこともできないのだ。また、優れた営業マンのように製品を売ることも、お客様を説得して請求を支払ってもらったり、プリンターを修理してもらったりすることもできない……、まあ少なくとも今は。

とはいえ、ChatGPTはこれからもっといろいろなことを実際に始めるだろう。というのも、Microsoft(マイクロソフト)やその他の企業が、この技術を取り入れて、自社のAIプロセスと融合させ、ChatGPTからのコマンドで、PowerPoint(パワーポイント)プレゼンテーションやExcel(エクセル)スプレッドシート、Outlook(アウトルック)メールの作成などを行うワークフローを実行させることを計画しているからだ。そして、まもなくChatGPTは、会話やその他のトリガーに基づいて、CRMプログラムや、機械や、機器内のアクションを起動するために使用されるようになるだろう。
主張4:ChatGPTは人に取って代わる
OK、一部の人はおそらくそうなる。しかし、大部分の人はそうならない。

これはアプリに過ぎないのだ。芝を刈ることも、屋根を直すことも、ゴミを拾うことも、優れたサポート担当者のような顧客サービスを提供することもできない。そうではなく開発者、科学者、エンジニア、会計士、人事マネージャー、営業・マーケティング担当者など、知識労働を行う優秀な人材が、より多くの仕事を、より速く、より生産的に行えるようにするための強力なツールなのだ。

ChatGPTが一部の仕事を代替することは間違いない。ブログの執筆や、ウェブサイトの更新、政策の策定などの、低レベルの仕事は大幅に削減され、その仕事に従事していた人はその時間を、より多くのより良いものに振り向けることができる。しかし、賢いリーダーなら、ChatGPTをジョブキラーと捉えてはならない。これは、オーバーヘッドを削減し、作業者がより良い仕事を迅速に行えるようにするための強力なツールなのだ。かつては重要であった多くの仕事がテクノロジーに取って代わられた。そして、いつもと同じように、人はそれに適応していくのだ。
主張5:あなたのビジネスは、今すぐChatGPTを使うべきだ
まあそう焦らずに。不動産業者やソフトウェア開発業者など、一部の企業で活用されているとの報告もあるものの、まだまだ長い道のりなのだ。ChatGPTの結果はまだ不完全で、不正確で、偏ったものなのだ。また解決する必要があるプライバシーの問題があり、これらの対処すべてにコストがかかる。これはオープンソースのアプリケーションであり、経験豊富な開発者がそれを有用なものに変える必要があるのだ。

さて、これらの主張から得られるものは何だろう。ChatGPTをCRMシステム、またはビジネスの他の場所で使用しようと考えているならば、考える方向は正しい。でも、今はまだ考え続けていてほしい。

考えている間に、大手テック企業やスタートアップ企業に力仕事をしてもらい、テスト、レビュー、吟味を経たChatGPTをベースのアプリケーションやツールを作って貰うことにしよう。その上で、意味があれば購入したり、サブスクライブしたりすればいいのだ。そのときには、この技術(そしてすでに登場している多くの競合製品)は、私たちがすでに使用しているCRMやビジネスアプリケーションの多くに知らない間に組み込まれるため、おそらくもうChatGPTと呼ばれることはないだろう。

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