生活必需品としてのiPhone 14シリーズ、割高感ある価格に見合う新基本機能

Apple(アップル)は米国時間9月7日に、カリフォルニア州クパティーノにある本社のホールでスペシャルイベントを開催し、iPhone 14シリーズ、Apple Watchの新製品、そしてAirPods Proの新モデルを発表した。

アップルの売上高の50%以上を占めるiPhoneは、決算だけでなく、同社のエコシステムの人口を維持もしくは増加させる要因となり、結果としてアップル全体のビジネスの将来を占うことになる。

維持された価格の見方

ベースモデルとなる6.1インチのiPhone 14は799ドルに据え置かれた。日本での価格は円安の影響で上昇し、税込11万9800円からという販売価格は、控えめにいっても割高感しかない。ただし、米国では少し見方が違う。急激なインフレに見舞われている米国市場でも価格を守ったことは、むしろ相対的な価格の低下につながるのだ。

日本で最も高い最低賃金(時給)は東京都で、2022年10月から1072円だ。税込11万9800円のiPhone 14 128GBモデルを購入しようとすると、最低賃金の112時間分に相当する。

米国で最も最低賃金が高く設定されているのは、アニメーション制作会社Pixarの本社があるサンフランシスコ対岸の街カリフォルニア州エメリービル市で、消費者物価指数(CPI)に連動して上昇を続けており、2022年7月1日の改訂で時給17ドル48セントになった。原稿執筆時点のレート(144円)で換算すると、約2517円に相当する。

iPhone 14 128GBモデルの米国での販売価格は799ドルで、これにカリフォルニア州の物品税10.5%を加えた金額を、最低賃金で割ると、50.5時間という数字が出てくる。日本の半分以下の時間で、iPhoneの購入金額を満たせてしまうのだ。

物価に対する感覚は相対的なものではあるが、特にアップルにとって最大の市場である米国において、日本人が思うほど、据え置かれたiPhoneの価格が高いと思われない可能性があることは、留意すべきだろう。

エッセンシャルツール

スマートフォン市場は飽和状態で、AndoridもしくはiPhoneはシェアを奪い合うことでユーザー人口を増やす方法を模索することになる。iPhoneは端末価格が高く、先進国・新興国ともに追いかける立場だ。

イベントの冒頭、iPhone、Apple Watch、AirPodsの3つの製品を発表することをあらかじめ予告したティム・クックCEO。アップルはこれらの製品を「エッセンシャルツール(生活必需品)」と位置づけていたのが印象的だった。

iPhoneが登場して15年間、スマートフォンは確かに現代の生活における問題解決ツールとして重要なポジションを確立してきたことは疑いがない。特に米国を見ていると、生活インフラとして足りていなかった通信や交通、決済、医療と行った領域の「問題解決ツール」として作用してきた。

今回アップルはスマートフォンに加えて、スマートウォッチとワイヤレスヘッドフォンも生活必需品に位置づけた点は、個人的におもしろさを感じた。

特にApple Watchでは、自動車の衝突事故の検出機能を加えた。またiPhoneは今年度の最も安いモデルにも、衛星通信を用いた緊急通報サービスが等しく搭載された。端末の価格などに左右されず、命を守る機能を惜しみなく投入する姿勢は、同社のスマートフォンを含むエッセンシャルツールの考え方を色濃く反映するものだ。

iPhone 14シリーズにも、同様の配慮がなされている。

iPhone 14、iPhone 14 Plus、iPhone 14 Pro、iPhone 14 Pro Maxの4モデルについては、米国とカナダにおいて、衛星通信を利用した緊急通報に等しく対応する。加えてApple Watchと同様、256Gまで検出できるセンサーを搭載し、自動車の衝突事故の検出もサポートした。

特に衛星通信はProモデルでのみサポートという差別化でもユーザーは納得していたかもしれない。しかし上位モデルに限定せず、すべてのモデルで機能を追加した点は、アップルがiPhoneに対してデザイン、カメラ、機械学習、セキュリティ・プライバシーの次に「安全」という顧客価値を追加しようとしている戦略が透けて見える。

ハードウェア × ソフトウェア × ?

アップルは常々、ハードウェアとソフトウェアを中心に設計している点を強調する。これが同社の製品開発の手法であり、他社(ハードウェアとソフトウェア分離型)の開発に対してアドバンテージを取ることができる数少ない要素だと理解しているからだ。

今回も非常にふんだんにその要素を取り入れた進化がもたらされた。その代表格がDynamic Islandだ。

2017年登場のiPhone X以来、前面すべてを画面が覆うデザインを採用してきた。そのかわり、顔認証センサーとカメラを収める画面の切り欠き(ノッチ)ができてしまい、2021年のiPhone 13シリーズではそのサイズが小さくなった点をアピールした。

そして2022年のiPhone 14 Proファミリーでは、ノッチを画面端から独立させた「島」とする改善を行った。もちろんAndroidの世界では、iPhoneがノッチを搭載したころから、パンチホールやピル(薬のカプセル)の形状で画面の中に穴を空けてカメラを収める手法が当たり前のように用いられてきた。

そこでAppleがひと工夫したのが、Dynamic Islandだ。iOS 16で導入した割り込みの通知やライブ通知の領域として、有機的かつスムーズに心地よくアニメーションしながら伸縮する特別な領域の「デザイン」として昇華させた。

例えば音楽再生をしていてホーム画面に戻ると、黒い切り欠きが左右に拡がり、アルバムの画像と音楽再生中であることを表すアニメが表示される。電話がかかってくると、この領域がさらに縦に広がり、電話の主の名前と写真を表示し、応答するためのボタンが出てくる。

ノッチもハードウェアの欠点をデザイン的なアイデンティティと解釈していたが、今回のパンチホールも、ただ穴が開いているだけではなく、ユーザーとのインタラクションのための領域として実装したのだ。

ただし、この流麗なアニメーションを、通知や割り込みがくるごとにしょっちゅう動かすと、それだけで電力消費を増やしてしまうことは想像に容易い。

そこでA16 BionicにはDisplay Engineといわれるディスプレイ駆動のコントロールを行うカスタムプロセッサを用意し、リフレッシュレートの可変(1〜120Hz)でディスプレイ側の電力消費を抑えつつ、4nmプロセスで更なる省電力化されたA16 BionicのCPUとGPUを用いて、やはりアニメーション処理の電力も削って実装にこぎ着けている。

確かに何気なく動く黒い領域は普段の生活の中で、ちょうど画面の中に生き物を飼っているように、動いている様子を見ていて楽しいものに仕上がっているが、画面の切り欠きやパンチホールをそうした演出に昇華させたのは、チップレベルのハードウェアとソフトウェア、デザイン、ライフスタイルを包括的に見るアップルらしい実装だと評価することができる。

選びやすさも明確に

今回、iPhone 14は「iPhone 13 Pro」の仕様に近い構成となっている。据え置かれたA15 Bionicチップは5コアGPUが搭載され、また1200万画素メインカメラは大型センサーとセンサーシフト式手ぶれ補正を搭載した。

つまり、昨年のPro仕様が、今年のスタンダードモデルに位置する、というわかりやすいモデル構成になった。1年前に最新だったテクノロジーを手頃な価格で手に入れるという位置づけがわかりやすい。

ただし、iPhone 14にはiPhone 14 Proと同様のPhotonic Engineが搭載されており、センサーは同じでも写真の画質はかなり磨きがかかっていることは、ハンズオンエリアでも確認できる。

そして、iPhone 14 Proは、4nmプロセスとなったA16 Bionicチップを搭載。設計は同じだが微細化が進み消費電力が下がり、高クロックでの駆動が可能になるから性能も上がる。また空いたスペースに、ディスプレイ駆動などを司るDisplay Engineが搭載され、最低1Hz(1秒に1度)の書き換えによる常時点灯ディスプレイなどの新機能と、前述のDynamic Islandなど新しいハードとソフトによるデザインを、いち早く体験できるようになった。

結果的にはスタンダードモデルを1年足踏みさせるかたちにも見えるが、ラインナップ全体からすると「Proの機能が翌年のスタンダード」という法則性が生まれ、選びやすいラインアップになったのではないだろうか。

iPhone 14、iPhone 14 Pro、iPhone 14 Pro Maxは9月16日発売、iPhone 14 Plusのみ遅れて10月7日発売の予定だ。

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